cats and dogs

‐original BL novels‐



秘戀 -後-

   § : 『INDEX/小説紹介』
▲「妖は宵闇に夢を見つ」シリーズ 目次へ

  

<< 前のページ


 夜光は一糸纏わぬ姿で褥の上に仰向けに横たわり、行灯の明かりに煌く珠のような汗を浮かせた真白い身体を、しきりにひくつかせていた。
 火がついたように熱い股間の上には、もうどれくらいそうされているのか、巳汐の露草色の頭がある。涙が滲むほど恥ずかしいが、胸元に悪戯されながらひたすら股間以外の場所を撫でられくすぐられて焦らされるうちに、どうにもならず、夜光はそこに下さいと巳汐にねだってしまった。
 全身から血が集まってあさましく反り返った夜光のものに、巳汐はぴちゃぴちゃと湿った音を立てながら、飽きることなく唇をなぞらせ、濡れた舌を這わせている。熱く滾ったものを緩く扱きながら、下がった袋を丹念に舐めしゃぶり、反った根元から舌を伝わせて、赤くつるりと膨れた蜜まみれの先端で遊ばせる。陰茎ばかりでなく、その下の窄まりにも、巳汐の細く長い指が二本ほど挿し込まれていた。屹立した先端から伝う淫蜜と香油とにたっぷり濡らされたそこは、簡単に巳汐の指を咥え込み、ただゆっくりと抜き挿しされているだけで、ひくひくと卑猥な収縮を繰り返していた。
「ん……ッ、ぅ……ん……」
 夜光の弱いところを巧みに責めては弱め、腰を炙る熱を昂めてゆく巳汐の愛撫に、夜光はただもうまろび出そうになる喘ぎを堪えるだけで精一杯だった。それも時を追うごとに、びくんと腰が跳ねて、上ずった声が喉をつく回数が増えてくる。夜光はぎゅうと敷き布を握り締め、小刻みに震える四肢を突っ張らせて、はしたなく乱れてしまわぬよう堪えながら、眩暈がするほど甘美な巳汐の愛撫に陶酔していた。
 花として上がる座敷では、相手など選べない。よほど好みでないだとか、ひどい相手であれば拒絶もできるが、ただ好みではないというだけで闇雲に遠ざけていては、どうしても花としての評判は落ちてしまう。
 それらの交わりに比べて、ただ巧みだというだけでなく、なんと巳汐の愛撫の甘美なことか。身体が芯から燃え上がり、とめどなく蜜があふれるほど、なんと快いことか。股間で蠢く長めの巳汐の髪が肌にかするだけで、たまらないほど夜光の血潮はざわめいた。
 心では望まない相手にでも、花であるからには媚びて感じているふりをしなければならない。それを苦痛に思う花もいるからこそ、少しでもまぎらわせるために、座敷には催淫効果のある香油や香が用意されている。あれはそういった趣向を好む客のためだけではなく、花自身のためにも置かれているものなのだ。
 勿論中には、本当に夜光を可愛がり、よくしてくれる者もいる。それでも、今まで肌を重ねたそれらのどんな相手よりも、巳汐の体温の方が、その肌と唇の方が心地良かった。
「あッ……!」
 下の窄まりに挿し込まれ、それまではただゆるゆると慣らすように動いているだけだった巳汐の指が、不意にぐるりと強く下腹の奥を掻いた。それが見事に夜光の最も弱いところを衝き、夜光は目を見張って腰を引きつらせた。
「あ、あッ……あっ……!」
 ゆるやかにじくじくと炙られ続けていた身体は、一瞬にして、そこから滲んだ強烈な快感に囚われた。巳汐は夜光の陰茎を舌と唇で刺激し続けながら、その下腹の奥でぷくりと膨らんだ箇所を、ぐちぐちと指先で捏ねる。腰から指先までもが熱く痺れてとろけてしまいそうな悦びに、夜光はずっとこらえていた喘ぎが喉を破って高く上がってしまったことすら自覚できなかった。
「あ、……あ、いッ……はぁっ、あ……っ!」
 呼吸ができないほどの気持ちの良さに、夜光は汗まみれの薄い身体を、乱れた臥所の上で妖しくくねらせる。さんざん焦らされ昂められた末に与えられた深く強烈な悦楽に、夜光の腰は堪え切れずびくびくと逃れたいように跳ねた。けれどその腰は、しっかりと巳汐に押さえられてしまって自由にならない。そればかりか、窄まりの奥にしっかりと挿し込まれたままの指はぐちゅぐちゅと卑猥な音をますます奏で、熱く絡みつく粘膜を嬲り続けた。
 たまらず夜光の華奢な腰がせり上がり、背が反り返るのを、巳汐はこれ幸いと片腕で抱え込んで、ますます動けなくしてしまった。今にもはじけてしまいそうに膨らんだ陰茎には、そうはさせまいとするように、ちろちろと赤い舌先だけで、くすぐるように悪戯をする。
「ひっ、ひぁ、ああぁ、いやっ……あ、あ、み、しお、さまッ……!」
 夜光は敷き布を握り締めていることもできなくなり、彷徨った手が、どうにもならぬように咽ぶ顔を甲で隠すように覆った。夜光の身がいよいよびくびくと痙攣すると、巳汐は指を下腹の奥から抜いてしまった。
 巳汐は夜光の感じやすい腰まわりや薄い腹や太腿に手や唇を這わせながら、その股間のものをあくまで軽く悪戯する。そして夜光の身が火照りながらも少し鎮まると、またその奥に指先を忍び込ませて捏ね始める。そんなことを幾度となく繰り返されるうち、夜光はもはや脳髄まで濃厚すぎる快楽にどっぷりと浸蝕され、白く薄い身体をひくつかせ捩らせながら、あられもなくひたすらによがり悶えた。
 そんな夜光の様を、巳汐も心ゆくまで堪能した。恥じらいながら懸命に反応を殺していた夜光が、やがて身体の昂まりに翻弄され、つつしみを忘れて淫らに咲き乱れる様が、こよなく愉しく可愛くてならない。巳汐が夜光の汗の筋を幾筋も伝わせた腰骨に口付け、ぺろりと舐めて軽く歯を立てると、夜光は乱れすぎて徐々にかすれてきた喉で咽び泣いた。
「おまえは本当に可愛いですね、夜光」
 ようやく巳汐は自らの着物の前をくつろげながら、既にぐったりとして呼吸が弾み切っている夜光の頬に口付けた。甘く深すぎる快楽に浸され、とろりとなった紫の瞳が力なく瞬く。その様子はまだどこか少し幼いようでもあり、同時に滴るように妖艶で、数え切れないほどの色事に馴染み無数の相手を啼かせてきた巳汐の神経すら絡め取った。
「み……しお、さま……」
 濡れた唇が力なく巳汐の名を呼び、巳汐はそれに誘われるまま、柔らかなそこに唇を重ねた。舌を差し込んで捏ねまわすように味わいながら、夜光の細く白い脚を大きく広げさせる。夜光が一瞬身構えようとしたのを待たず、巳汐はその股間で張り詰めているものの根元をいきなり強く握った。
「んッ……!」
 膨れきった陰茎の根元を急に強く握られ、夜光が苦しげに呻いてびくんと大きく跳ねた。そこに一息もつかせぬほどの強引さで、淫蕩にほぐれきって妖しく息づいていた夜光の窄まりに、巳汐の充分に滾ったものが押し付けられた。
「……ッ、ん、う、んッ……!」
 脚を大きく広げられて膝を折られた姿勢の中、とろけきった夜光の下腹に、ずぶずぶと熱いものがめり込んでくる。深く貪るように重ねられた唇のせいで、喘ぎもろくに上げられない。その強すぎる刺激に、握り締めた巳汐の手の中で、夜光のものがいっそう強張ってどくどくと脈打った。だが強く根元を握られたそれは、放出することを許されず、夜光の腰が苦しげに痙攣した。
 夜光の柔らかくほぐれていた窄まりは、簡単に巳汐のものを根元まで飲み込んでしまった。巳汐がその唇に口付けを繰り返していると、夜光も無我夢中のように巳汐の唇を求め、乱れた吐息を零しながら何度も舌を絡めた。
「まだ気をやってはなりませんよ」
 夜光は身体が言うことをきかないように震えていたが、巳汐は少しはそれがおさまってきた頃を見計らい、夜光の根元を掴んでいた手を放してやった。夜光は涙に濡れ、溺れるような快楽に虚ろになりかけた瞳を彷徨わせながらも、巳汐の言葉にこくこくと健気に頷いた。
 巳汐は夜光の背に腕を差し込み、支えてやりながら、褥の上に起き上がった。
「あぁあッ」
 巳汐の上に座る格好になり、己の体重のせいで最も奥深いところまで衝き立ってきたものに、夜光の唇から悲鳴が上がった。しとどに汗に濡れた白い身体が、のけぞったままぶるぶると震える。巳汐はその背を支えて宥めるように軽く叩きながら、夜光の震えと呼吸が少しは落ち着くまで待った。
「み……みしおさま……み……」
 巳汐と向かい合わせになった夜光は、縋りつくように巳汐の肩に腕をまわした。巳汐に翻弄されるうちに、もうほとんど思考も理性もとろけているのだろう、夜光は本能にかられるままに巳汐の唇を求める。熱く甘いそれにこたえてやりながら、巳汐は夜光のすっかり乱れてしまっている乳白色の髪を撫でた。その感触すらもたまらないように、夜光が口付けの合い間に可愛らしく濡れた溜め息を零す。そして我慢できないように、巳汐の上に跨らせた腰を揺らめかせ始めた。
「ん、んっ……ぁ、あ、ふ……っ」
 喘ぎを零しながら唇を合わせ、完全に陶然と表情をとろけさせた夜光は、眦に涙を浮かせながら巳汐にしがみ付く。その華奢な腰の動きは淫猥極まりなく、蜜と香油とにまみれ繋がりあった箇所から、ひどく劣情を煽る湿った音がしきりに立った。無意識のように巳汐を抱き締めて腰をくねらせる夜光は、己の内臓の粘膜をこすりながら熱く行き来するものに、幾度となくふるふると震え上がった。
「夜光」
 自身も快楽を貪っているのだろうが、それ以上に巳汐に悦びを返そうとするように熱く腰をくねらせる夜光に、その下腹に呑まれた巳汐のものも次第に堪らなくなってきた。巳汐は思わず夜光の濡れた背を抱き締めて、その動きを止めさせた。
「上手になりましたね……」
 夜光の耳元に囁いた声が、湧き上がる痺れと衝動を抑えているせいで、いつもより低い吐息のような響きになった。その声音に、巳汐が本当に感じてくれていると理解したのだろう、夜光が火照った頬を嬉しそうに綻ばせた。
「そう、ですか……?」
 素直に微笑むその様子に愛しさすら覚え、巳汐は夜光の唇に優しく唇を重ねた。夜光もうっとりと、その柔らかく丹念な口付けに酔った。
 柔らかく口付け合いながら、巳汐は夜光の身を褥に倒した。そうしながら、ゆっくりと腰を動かし始める。びくん、と夜光が強張り、もっとと誘い込むように脚を広げて腰をせり上げた。その華奢な腕が、自分の上にいる巳汐にまわされる。
「あ、あっ……はっ……あ、あぁ……ッ」
 巳汐の唇が夜光の首筋に口付けを降らせ、次第にその腰の動きが性急になってゆく。充分にやわらいでぬめった夜光の中は妖しく蠢き、ぐちゅぐちゅと音を立てて抽挿される巳汐のものに絡みついた。下腹の奥の悦楽の核を巳汐に衝かれると、夜光は悲鳴じみた声を上げ、ますます自身の奥で巳汐を強烈に締め上げた。全身を引き絞るようにして反応する夜光に、巳汐もまた快く酔わされた。
「み、みしおさま……っ、も、もう……ッ……」
 何度も何度も奥を衝かれ、ここに到るまでにも数え切れないほど達する間際まで追いやられては焦らされていた夜光が、いよいよ啜り泣きながら巳汐にしがみ付いた。
 そんな夜光が可愛く、巳汐はその薄い身体を抱き締めて揺すりながら、少しだけ意地悪心を起こして言った。
「もう少しだけ辛抱なさい。その方がずっと悦くなりますよ」
「あぁ……でも……でも……っ……」
 夜光はひくひくと引きつりながら、汗まみれになって今にも駆け上がりそうな衝動と闘った。痺れてひりつく指先までもが感じてしまうほど、もうそれ以外に考えられないほど、巳汐に奥まで掻き回される身体が芯から滾り切って熔けてしまいそうだ。気持ちが良すぎて苦しい。今にも心の臓が破裂してしまいそうで、夜光の身体中を繰り返し甘美な痙攣が走り抜けた。
 夜光の限界の一線をきちんと見極めていた巳汐は、その涙に濡れた頬に軽く口付けると、その身を高みに押し上げてやるために、薄い肩を押さえつけて大きく動き出した。
「あ、あ、あっ……!」
 目を見開いた夜光が、煮え滾る下腹を容赦なく穿ち始めた巳汐に、大きく喉を、背をのけぞらせる。もう堪える限界まできていた夜光は、抗うこともできずに、そこで白熱した飛沫を迸らせた。その瞬間に激しく痙攣して己を締め上げてきた夜光に委ねるように、巳汐も少し遅れて高みへと昇りつめた。小刻みに震え続けている夜光の汗に光る薄い胸板に、巳汐はその頼りなく華奢な身体を抱いたまま、優しく唇を当てた。
 巳汐にはまだかなり余裕があったが、夜光はその一度で意識を保ち切れなくなってしまい、震えながらのけぞった末に、糸が切れた人形のようにぐったりと褥に身を沈めてしまった。
 乳白色の睫毛をふわりと落としている、その無垢なほどの頬に、巳汐は仄かに苦笑した。もっと可愛がってやりたい気持ちはあったが、これ以上は夜光の明日以降の勤めに差し支えてしまうだろう。それに夜光が厭がらないようであれば、またの機会に愛でてやることもできる。
「今夜は、ゆっくりおやすみなさい」
 夜光の乳白色の髪を柔らかく撫でてやりながら、その額に巳汐はそっと口付けた。


 翌朝になるまで目を覚まさなかった夜光だが、目覚めるなり巳汐の姿を見て驚愕し、真っ赤になったり頭を抱えたり慌てふためいて身なりを整えたりと、しばらくの間おおわらわだった。その様子に思わず巳汐は笑ってしまい、夜光がそれを恨めしげに軽く睨んだりした。
「おまえが良い花になったようで、安心しました」
「……それなら、そんなに笑わなくても良いではありませんか」
 まだ頬を赤くしたまま、むくれてつんと顎をそらした夜光に、巳汐は悠然とした微笑を返した。
「ですが、私を翻弄するにはまだまだですね。また遊びに来ますから、今後に期待していますよ」
 意味ありげな流し目をくれた巳汐に、夜光がますます耳朶まで真っ赤になった。しかし憧れ慕う巳汐を睨み切ることなどできるわけもなく、赤くなったまま俯いて、「……精進します……」と小さく呟いた。

 見送るときまで少しむくれていた夜光に、巳汐は気を悪くした様子もなく立ち去っていった。その余裕のある様子が夜光には羨ましいようで、どこか少し切ないような気もした。
 去ってゆく巳汐の後ろ姿を門から見送りながら、夜光はつい思い出してしまった昨夜のあれこれに白い頬が赤くなり、誰が見ているわけではなくても、慌てて顔を伏せた。
 さらさらとした乳白色の髪が肩の上で微風に舞い、頬にかかって、その赤みを簾のように覆い隠した。


(了)


<< 前のページ


▲「妖は宵闇に夢を見つ」シリーズ 目次へ




あとがきというほどでもないので、少しだけ……
巳汐は夜光にとって、おそらく自覚もないほど淡い初恋(憧れ)の相手だったのでは、と思っています。
というわけで、今回のタイトルはそこからつけてみました。

ねこたま




web拍手 by FC2
▲コメント(拍手)&返信欄
コメント大歓迎、お気軽にどうぞ!